超高層建築の世界#4 Vertical Forest(垂直の森)
- TheWorldofSkyscraper
- 2020年3月28日
- 読了時間: 6分
更新日:2020年4月11日
SKYSCRAPER’S WORLDへようこそ
管理人のBKBこと、かわさきです。
このブログでは世界の超高層建築を紹介していきます。
今日はこれまでにご紹介してきたいかにも現代的な高層建築とはひと味違った
コンセプチュアルな高層建築を取りあげたいと思います。
ということで今回ご紹介するのがこちら、
Vertical Forest(垂直の森)
イタリアのミラノにある高層建築ですが
その名の通り、森を縦に伸ばしたような集合住宅です。
外から見える建物部分は白を基調として
バルコニーや窓にあたる部分は大きくとって
ガラスをはめ込んだ非常に透明性の高いつくりをしています。
ただ、それが下から上まで小さい植物から大きな木といった
様々な植物で覆われているところにこの建築のユニークさはあります。
そんなVertical Forestは
大きな方が111m26階建て,もう一方が76m18階建て
2本のタワーで構成されています
その中に大小合わせて約800本の木, 5000本の低木が
植えられているというから驚きです。
また、ドイツ建築博物館のInternational Highrise Award(2014)や
高層ビル・都市居住協議会(CTBUH, 2015)の最優秀高層建築賞を受賞するなど
高く評価されている建築でもあります。
設計を務めたステファノ・ボエリはイタリア最大の理系大学である
ミラノ工科大の教授を務める一方で、
過去にデザイン系雑誌の編集長を努めるなど非常に多彩な経歴の持ち主です。
その彼が、今回このVertical forestを設計するにあたって軸にしたものが
都市の中の生物多様性, 都市の無秩序な拡大に対するアンチテーゼです。
前述のように木々に覆われた高層のレジデンスは
未来的でありながら自然に返るような原点回帰的なコンセプトを持っており
住まいとしての都市建築の持続可能性という問題にひとつの答えを提示しています。
このVertical forestが作られたのはポルタ・ヌオヴァと呼ばれる再開発地区です
ここはミラノのビジネス街で、イタリア随一のハイテク都市
そして国際交流の拠点として知られています。
ポルタ・ヌオヴァというのは言葉通りに訳すと
「新たな門」という意味でまさしくイタリアと
ヨーロッパ、世界をつなぐ玄関口として生まれ変わった都市と言えます。
というのも、この辺り一帯は1990年代、
発電所跡地や廃路線跡ですっかり跡地になっていたのです。
これをロンドンやその他のヨーロッパのポストモダンな都市に倣って
ビジネス地区として蘇らせよう97年に立ち上がったのがこの再開発計画でした。
延べ29万㎡にわたるこのプロジェクトは2005年に計画決定が下され、
マスタープランや建築設計に携わる者として3者が選ばれました。
マスタープランの中でポルタ・ヌオヴァは3つのエリアに分かれます。
そして設計担当はそれぞれのエリアで各々ランドマークとなる
大型の建築を設計しています。
3つのエリア、というのがGaribaldi(ガルバルディ)、Varesine(ヴァレシネ)、Isola(イゾラ)です。
ガルバルディは主にオフィスと商業のエリアで計画はシーザー・ペリ(Cesar Pelli)が担当し、
ヴァレシネはこれまでにも超高層建築も手掛ける組織設計として紹介したKPF(Kohn Pedersen Fox)が担当しています。
両者はそれぞれUnicredit Tower(ウニクレディトタワー)231m,
TorreDiamente(トーレ・ディアメンテ)130mの高層建築を完成させています。
このうち、ウニクレディトタワーはイタリアで最も高いビル、
トーレ・ディアメンテは鉄骨造でイタリア1位というから
どれほどこのプロジェクトに資本が投下されたかがうかがい知れます。
ちなみに、バーティカル・フォレストのあるエリアは線路に囲われていたことから
イタリア語で島=Isola(イゾラ)の名前が付けられたとのことです。
さて、続いてバーティカル・フォレストのデザインとコンセプトに移ります。 ◯外観の特徴と植栽の計画
バーティカル・フォレストを機能の面から分類すれば
イタリア・ミラノの再開発地区にある2棟のタワーマンション
といったところでしょうか?
ただその存在を唯一無二にしているのは冒頭にも述べたように
その高層建築の全体が木々、植物の緑に覆われているからです。
デザインは非常にシンプルで、構造部分は白で統一されていて
薄い板が段々に入れ違いになって木々の間から顔をのぞかせる様子は
枝が揺らめく中から木漏れ日が漏れるようです。
バルコニー部分は2棟合わせて6,000本近くの木が植えられているそうですが
これはもはや一本の木と言ってもよいのではないでしょうか。
設計を担当したステファノ・ボエリ率いるStudio Boeriは
このプロジェクトを通じて都市の無秩序な開発を抑制し
都市の持続可能性を高める方法を探求しています。
今回用いられた植物も従来ミラノに植生するものを使用し
それを縦方向に積み上げられた住居群の中に凝縮させることで
都市開発を外側に広げることなく都市部で生物多様性を取り戻すことに成功しているのです。
これはつまり、テクノロジーや工学的なアプローチでなく
自然の力をもって環境の持続性を建築的に解決したとも言えます。
そういった意味でも今回ご紹介したVertical Forestは環境に配慮した
都市型建築のひとつのモデルタイプとなっていくことでしょう。
実際、このバーティカル・フォレストは同じコンセプトで 他の地域にも展開されていくことが決まっています。 その第一号がスイスのローザンヌ(117m)で建築が進められているほか、 アルバニア、ドイツ、フランス、中国でも計画が進められています。 シンプルなのに意外性にあふれるコンセプトを持ち、 また季節の移ろいにしたがい色を変えるその姿 そういった点で、どの街でも新たなランドスケープとなり得る この建築スタイルの今後の展開は目が離せませんね。
では最後に、Vertical Forest@Milan の印象的な写真をハイライトでご覧ください
はい、ということで今回は以上となります。
いかがでしたか?
高い建物って見てるだけでワクワクしますよね。
ポッドキャストでは可能な限り言葉で、その魅力を伝えようということで配信をしています。
YouTubeではこの後、建築パースや参考画像を用いたハイライトを用いて
映像をまとめて行きますのでよかったら見てもらえると嬉しいです。
ビジュアル以外の部分でも今回のVertical Forestのように周辺のトピックを調べていくと色々と面白い情報が出てきて、調べてみようかな、もっと知りたいと思ってもらえたのではないかと思います。
感想や質問、この建物について知りたい、といったご意見はコメント欄でお待ちしてます。
これからも世界の高層建築を紹介していくのでチャンネル登録してもらえたら嬉しいです。
では今回はこの辺で、さようなら!
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